このレンズを手に入れたのは、今から8年ほど前だったと思います。まだレンズについての知識が浅かった頃、何気ない会話の中で耳にした「三次元的ハイファイ」という、当時はまるで意味の分からない言葉がきっかけでした。調べていくと、「高再現性」「NIKKORレンズにしかできない描写」「点光源を点として写す」など、どれも抽象的で掴みどころのないワードばかりが並びます。正直、理解できたとは言い難いけど、なんとなく「これは凄いレンズに違いない」という感覚だけが先行し、その勢いのまま購入しました。

ところが、実際に撮ってみても、正直なところピンときませんでした。期待していた“何か”は写真の中に見つけられず、このレンズはしばらく簡易の防湿庫の奥で眠ることになりました。その後も、いろいろなレンズを試してきました。ボケの滑らかさ、ざわつき、背景との分離感。ネット上に溢れる情報を読み漁り、実際に撮っては首をひねり「これは良い」「これは違う」と、自分なりに考え続ける日々。そうした試行錯誤を何年も繰り返すうちに、ほんのわずかな差異が、少しずつ見えるようになってきたと思います。

だからどうした、という話なんだけどね。けれど、こうしたことに時間とお金を注ぎ込み、悩み、考え、迷い続けられた自分は、振り返ってみるととても幸せな時間を過ごしていたのだと思います。もちろん、今になってこのレンズの真髄が分かった、などと言うつもりはありません。ただ、これからもいろいろと撮り続け、感じたことを少しでも言語化していきたい。そんなことを50代の初冬の日に、ふと考えた次第です。
今回は、Nikon Z5 × AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gの組み合わせで、お茶の水から秋葉原、上野公園をぐるっとまわって撮影してきました。












朝8時半頃に上野公園へ到着しましたが、想像以上の人出でした。まさに老若男女という言葉がそのまま当てはまる賑わいで、平日の朝とは思えないほどです。国立西洋美術館で開催されている「オルセー美術館所蔵 印象派」を観るつもりでしたが、あまりの混雑ぶりに早々に断念しました。行列を前にして、今日は無理をする日ではないなと素直に引き下がることに。

それにしても、なぜここまでして散歩をしているのか。理由は単純で、普段の移動手段がほぼバイクだからです。どうしても歩く機会が少なく、40代までは蓄積された筋肉量で何とかごまかせていましたが、年齢を重ねるにつれて、確実に筋肉が減っていることを自覚するようになりました。これは意識して歩かないといけない。そう思ったのが数年前のことです。せっかく歩くならカメラも持ち歩くだろう、という自然な流れで散歩撮影を始めました。

最初の頃は、ただ撮るだけ。写真はデータとして溜まっていく一方でした。そんな中、昔からよく見ていたカメラブログのことを思い出し、「自分でもやってみようかな」と思い立ったのがきっかけです。どうせやるなら、自分の思い通りにやりたい。そう考えて、WordPressを一から独学で学んでサイトを立ち上げ、2025年11月からブログを始めました。文章も写真も、サイトの作り込みも、まだまだ至らない点ばかりです。それでも、少しずつ何かを形にしていく面白さのほうが勝っています。試行錯誤を含めて、今は純粋に「楽しい」と感じられる時間です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

