初めてDistagonというレンズを強く意識したのは、10年以上前のCANONのフルサイズ機、EOS 6Dを使用していた頃になります。当時の私はレンズの組み合わせをよく分かっていなかったので、純正のレンズしか使っていませんでした。ネットの作例が今ほど溢れていなかった時代に、マウントが合えば、実は違うメーカーのレンズが使えることを知り、少ないネット情報の中で、手持ちのレンズとは明らかに違う描写を見せてくれたのが Zeiss の Planar と Distagonでした。中でも「Carl Zeiss Distagon T*1.4/35mm ZE」という刻印は、F値やTコーティングの響きと相まって、強い憧れを抱いたことを今でもよく覚えています。
その頃、私は動画撮影にも熱中しており、Panasonic GH2と純正レンズの組み合わせで、マイクロフォーサーズ機にも夢中になっていました。当時はいわゆる「ハック」という、カメラ内部のデータの書き換えを行い、ビットレートを向上させる行為が世界的に流行していて、設定データを共有するサイトまで存在し、vimeoにはハック済みGH2で撮影された映像が次々と投稿されている状態でした。マイクロフォーサーズはフランジバックの短さから多様なレンズを、アダプター経由で利用できることもこの時に知り、Distagonで撮影された映像もvimeoに公開されていたのです。そのシネマティックな画の美しさは圧倒的で、Planar、Distagon、Biogonといった銘の響きを知るにつれ、Zeissという世界に強く魅せられていきました。
そして私の動画ブームはGH2、GH3、GH4まで続きましたが、並行して5D Mark IIによるフルサイズ動画が本格化し、RED や Blackmagic Cinema Cameraといった映像機が普及する中で、私の関心は徐々にSONYへと向かいました。被写体に追随するAF性能の圧倒的な進化に触れた瞬間、映像撮影においてSONYは揺るぎない存在となり、αシリーズへと傾倒していきました。その延長線上でα7IVを購入し、さらにYouTubeで公開されていたSONY Distagon 35mm f/1.4による映像にしびれ、Distagonを手にする流れになったのです。

GH3を使っていた頃は、ギア付きのフォーカスリングを装着し、リグを組み、完全マニュアルフォーカスでピントを追い込んでいた自分が、いまZeissレンズをAFで運用し、被写体を追随させられる。この10年以上にわたる技術進化の流れを体感してきた者として、そこに大きな感動を覚えずにはいられません。だからこそ現在、このレンズでAF撮影ができるという事自体に、深〜く感動するのです。











Distagonとは、「ディスタンス(距離)」と「ゴン(角度)」を組み合わせた造語。

