少し前のことですが、銀座、京橋、八重洲、日本橋の公共機関で行われた、T3 PHOTO FESTIVAL TOKYOを見に行ってきました (2025.10.4-10.27開催)
以下、説明概要
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・テーマ「庭園」
オフィス、オープンな公共空間、建設現場を囲む壁など、都市には展示ホールとは異なり、芸術作品を鑑賞するために設計されていない空間が数多く存在します。これらは、庭師が種を蒔くように、キュレーターが作品を植える空間です。異なる文化哲学に根ざした日本庭園と西洋庭園のように、都市に出現する多様な庭は、地域社会や人々の交流を全く異なる形で表現しています。銀座、京橋、八重洲、日本橋に創られた15の庭園は、展示として訪れる人々を迎え入れ、互いに影響し合い、予期せぬ発見をもたらします。一つの庭園から別の庭園へと歩くことで、新たな感覚や疑問が呼び起こされ、訪れる人々に自分自身の中で培う豊かな経験が提供されます。
私が今回の作品で感動した方々を紹介したいと思います。
Stephen Shore / スティーブン・ショア
写真界の巨匠、スティーブン・ショア。1970年代のアメリカの風景を撮影した「Uncommon Places」を展示。圧巻でした。1971年に23歳という若さでニューヨークのメトロポリタン美術館で個展を開催する初の現存の写真家となる。

ビルの無機質な感じや立体の壁面の色合いが都会に溶け込み、スティーブン・ショアのカラー作品が際立つも、都市に馴染むようにした展示の仕方が素敵。





写真集では何度も見ていたけど、展示は初めてだったので感無量です。
Melissa Schriek / メリッサ・シュリーク
オランダを拠点に活動する写真家。私はこの展示で知ることができました。
身体の表現の可能性を主軸に制作を続ける。作品は感情、親密性、身体性を前提におきつつも、人々が自身と、お互いと、そして生きる空間と構築する関係性に対する深い興味を反映している。

以下、説明概要
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「日常の都市生活から一歩踏み出したいという衝動から始まりました。都市環境をただ目で見るだけでなく、身体全体で体験したい」

この柱に作品を馴染むように貼っているところがとてもいい。柱の表情が作品から浮き上がってくる感じと、この少しくすんだイエローがとても目をひく。初めて見たときは広告なのかと思うくらい馴染んでいました。でも広告にしては純度が高いので、よくよく見ていくと「作品」だと理解していきます。



Qingyu Tang / トウ・セイヨ
中国で活動されている作家。この方もこの展示で知ることができました。
日常からの逃避、他者との関係性、ファッションにおける若者の姿、民間信仰など、多様なテーマを扱い、現代社会における事象が抱える問題に関心を寄せる。ドーナツの穴を「存在」として捉えるように、写真やスキャナー、インスタレーションなど多彩なメディアを通じて「示し得ない自己」を外部との関係性とともに示している。

金色の傘に、肌を思わせる色の柄を持つキノコたち。大小さまざまなこのオブジェは、それぞれが一枚の印画紙から生み出されている。「きれいな金髪だね」「目が大きくて綺麗だね」。他者からしばしば褒められる言葉は時として相手の本質を捉えるものではない。外面的なイメージを捉える言葉は相手を女性として消費していく。増殖するキノコへのアーティストの自己投影は、イメージだけが消費されていく現代社会の現状を批評的に提示する。私たちは、他者の視線によってかたちづくられる自己とどう向き合うべきか。作品は私たちに鋭く問いかける。



写真というものが長い間、二次元で表現されていたものが、拡張と変容で写真の定義が大きく変わっているように思う。感度の鋭い作家たちは、そんなことはとうに掴んでいて、私たちに提示しているように感じる。そういう純度の高い現場を目撃できる、T3 PHOTO FESTIVAL でした。

この日の撮影は Nikon Zfc & Ai Nikkor 50mm f/1.8S の組み合わせでした。ピントリングが軽くてやりやすい。鏡筒の長さがこの組み合わせに合っていると思います。

