オールドレンズを買い漁っていた頃、同じレンズでも前期型・後期型といった製造年代の違いによって描写が変わる、という知識がありませんでした。その結果、思い描いていた写りとは異なる個体を手にしてしまったことが何度かあります。このレンズもまさにそのひとつで、本来であれば癖の強い前期型を狙っていたのですが、情報不足のまま購入してしまった後期型になります。

とはいえ、意図せず手に入れたレンズであっても、せっかく縁があって手元に来た以上、きちんと使い込んでみたいという気持ちは変わりません。結局のところ、今でも変わらず持ち出して撮影しています。CANON FL 50mm f/1.8 II型を一言で表すなら、「クセの少ない素直なオールドレンズ」。前期型と比べると描写はかなり落ち着いており、いわゆるオールドレンズらしい強い個性や暴れは控えめです。その分、描写は安定していて扱いやすく、「オールドレンズの柔らかさ」と「現代レンズ的な安心感」のちょうど中間に位置するような印象を受けます。FUJIFILM X-E4との組み合わせも非常に良好で、ミラーレス機との相性の良さを実感します。クセが少ないからこそ被写体を選ばず、日常のスナップにも自然に溶け込む。結果的に、肩肘張らずに使えるオールドレンズとして、出番の多い一本になっています。











前期型と後期型を見分けるうえで分かりやすい大きな違いが、A/M切り換えスイッチの位置です。後期型では、いわゆるシルバーのポッチが鏡筒側ではなく、画像のようにマウント側に配置されています。この点が外観上の明確な判別ポイントになります。私自身、当時のCANONのフィルムカメラを実際に使った経験がなかったため、このマウント構造を理解できておらず、初めて触った際にはレンズをうまく装着できずに戸惑った記憶があります。ただ、構造を理解してしまえば非常に理にかなっており、「なるほど」と納得できる設計でした。写真では触れていませんが、マウント部には小さな突起が設けられており、ボディ側の凹部と噛み合わせるようにして装着し、そこから回転させて固定する仕組みになっています。現代のバヨネットマウントとは感覚が異なるものの、機械的な必然性が感じられる構造で、個人的にはかなり好みのマウント方式です。


