カメラ本体はまだ難しいのかもしれませんが、中華製のレンズや周辺機器の仕上がりが、ここ数年でずいぶんと認知されてきたように感じます。これまでのイメージを払拭し、ポジティブな印象へと転換していくには、相当な資金と時間、そして熱意が必要だったはずで、その点は素直にすごいと思っています。しかし、モノによってデザインの類似性については賛否が分かれるところでしょうし、製品によっては驚くほどの価格で投入してくる点には考えさせられます。いったい原価はいくらなのか、どのような労働環境で作られているのか、といった疑問が頭をよぎることもありますが、真意は分かりません。ここではあくまで「モノ」として向き合うことにします。

アルミニウム合金で作られたこのレンズは非常に小ぶりで、FUJIFILM X-E4によく似合います。初期のLeicaレンズを思わせるサイズ感です。ピントリングのトルクは滑らかで、絞りリングも最初からクリックがなく、F値をシームレスに変更できます。もっとも、意図せず動いてしまう場面があるのは少し気になるところですが。X-E4が365g、レンズが150g。合計で520gという軽さは大きな魅力です。今回が初めての使用でしたが、曇り空の豪徳寺、晴天の下北沢を歩きながら、試写も兼ねて撮影してきました。
*絞り値が反映されなかったので記憶で書きました。開放付近で撮影していたことは間違いないので参考程度にして下さい。









レンズの外観は華美に飾り立てる方向ではなく、必要最低限の色と質感でまとめられた鏡筒に好感を持ちました。アルミニウム素材の質感も過度に主張することはなく、撮影の道具として自然に手に馴染む印象です。25mm(35mm判換算で約38mm)という画角は今回が初めてでしたが、ファインダーを覗いたときの感覚が、実際に目で見ている範囲と近く感じられました。広角ほど誇張はなく、かといって標準レンズほど距離を取らされることもないため、日常のスナップには扱いやすい焦点距離だと思います。距離目盛りについては、表示されている数値が実際の距離と合っているのか、やや気になる場面もありました。そのため撮影時は目盛りをあてにせず、ファインダー内のピーキング表示を確認しながらピントを合わせています。結果として撮影に大きな支障はなく、実用面では十分に許容できる範囲だと感じました。





これを一万円以下で作れてしまうという事実には、やはり素直に驚かされます。常にバッグに入れておく一本というよりも、「今日は少し違う気分で撮りたい」と思ったときに手に取るレンズとしては、かなり魅力的な存在です。そういう距離感で付き合える価格帯だからこそ、気負わず楽しめるのだと思います。
描写は全体的に柔らかく、どこか肩の力が抜けたような写りをします。今回はそのままだと少し眠く感じたため、現像の段階で明瞭度をわずかに上げ、全体を引き締める方向に調整しました。それでも柔らかさがきちんと残ってくれるところに、このレンズらしさを感じています。無理にシャープさを主張しない、そのバランスが個人的には好ましいです。
四隅の減光については、最初に写真を見たとき「思ったより出るな」という印象を受けました。ただ、これも欠点というより性格の一部なんでしょう。気になるカットでは編集で取り除けばいいですし、場合によっては画面をまとめる要素として活かすのも悪くありません。そう考えると、このレンズは完成度を求めるよりも、付き合い方を工夫する楽しさがある一本だと感じました。


